スピードタイプの馬体を見極めるためのチェックポイントを紹介します!
当サイトでは、馬体から読み解ける競走馬の能力をパワー、スタミナ、スピードの3要素に分けて評価しています。
本記事では、スピードタイプの馬体の特徴についてまとめています。
【まとめ】スピードタイプの特徴
スピードタイプは一瞬でトップスピードを出せるような加速力を持つ馬のことを示します。
そして、以下が私が考えるスピードタイプを見極めるうえで重要なポイントになります。
見てわかる通り、スピードタイプを示す特長はたくさんあります。
細かく見ていけばもっとあるかもしれません。
これ以降は各特徴の詳細について解説していきます!
【特徴】トモの筋肉量が多い
解説
トモとは主に後躯回りの発達した筋肉を示します。
トモの筋肉は、車に例えるとエンジンみたいなものです。
ここが発達していると大きなエンジン積んでいるようなもので、地面を蹴り出すたびに凄まじい推進力を生み出すことができます。
ただ、ここだけが発達していても全体的にはバランスの悪い馬体となり、スタミナ消費の速い走りになってしまいます。
総合力を評価する際にはマイナス要素ですが、短距離戦やスローペースでスタミナ消費がない状態での瞬発力勝負となった場合に分がある体系と言えます。
チェックポイント
以下の後躯についた筋肉量(ハリや大きさ)を見ることで判断します。
大きさ見分けるポイントとしては、下図のように後肢の付け根部分のくびれで判断します。
下図左のようにトモが大きいほどくびれも大きく、パワーを備えた馬体だと判断しています。
【特徴】馬体重が軽い
解説
馬体重が軽いということはシンプルに身軽でスピードに乗りやすく、小回りが利きやすい馬体と言えます。
ただ、スタミナ消費を抑えた走りにも繋がり、スタミナ要素も強い特徴となります。
個人的にはスピードよりもスタミナのほうが寄与度の高い特徴だと考えています。
平坦コースや小回り適性が求めれるコースであればスピード要素として効力を発揮できるでしょう。
チェックポイント
馬体重はシンプルに数値で判断しており、馬体重480㎏以下をスピードタイプと判断しています。
距離別、コース別で好走する平均馬体重は下表のとおりです。
スピードタイプは450㎏、500㎏前後どちらでも好走する馬が多いですが、平坦な小倉競馬場や、小回り適性が求められる中山競馬場などでは良く450㎏前後の馬が穴をあける印象です。
ただ、480㎏前後でもフォトパドックを見れば一目で筋肉量の少なく見える馬体も珍しくはなく、そういったばらつきも考慮して480㎏以下の馬をスピードタイプと判断しています。
【特徴】前傾姿勢
解説
骨格は大きく3つに分けられ、スピードタイプは右のように前のみに重心が偏ったような形をしています。
前傾姿勢であれば、素早く次の一歩を繰り出せるため、一気にトップスピードへもっていくことが可能です。
よって、スタートダッシュも上手く、逃げ、先行馬でこの特徴を持っていれば優位にレースを運べると思います。
チェックポイント
下図左のように後肢より前肢のほうが短いかを確認します。
まれに前後の筋肉が発達しすぎて(前の筋肉が発達し過ぎて前肢が短く見えるなど)全体のバランスとして前に傾いているように見える馬体もあります。
筋肉は無視し、あくまで骨格としてどうかを確認するのがポイントです。
馬体を全体的に見るよりも足だけを見たほうが良いかもしれません。
【特徴】首さしが短くて太い
解説
首さしとは、シンプルに首全体のことを示します。
スピードタイプは首の短い馬が多いです。
短いと一完歩のストロークも短くなり、 足の回転数があがり、素早い走りが可能となります。
馬は体全体を使って加速していくため、首の長さも重要な要素となります。
チェックポイント
首の大きさは以下のように顔の大きさと比較して判断します。
顔の大きさと比べて首全体が同等の大きさに感じたら首さしは短くて太いと判断しています。
【特徴】可動域が狭い
解説
可動域が狭いということは下図右のように肩から胸のラインが立ち気味であることを示します。
ラインが立っているということは、可動域が小さく、一完歩のストライドも小さな動きになります。
つまり、一完歩にかける回転数を速くすることができるため、スピードタイプに多い特徴となります。
チェックポイント
先ず初めにチェックする部分は胸の出っ張り具合を確認します。
胸回りの骨格は下図のようになっており、可動域の広さはその骨の長さに起因します。
骨が短い(小さい)ほど可動域が狭く、ストライドが小さい分、回転数の速い走りに繋げることができます。
つまり、下図右のように胸の出っ張りが少ないと可動域が狭いと言えます。
ただ、この胸の出っ張りはフォトパドックで見極めるのは少し難しいため、もう一つ見極めるポイントを紹介します。
それは足の付け根の位置です。
下図左のように前肢の付け根が胸元まではっきり見えるような馬体は肩が柔らかく駆動域が広い可能性が高いです。
可動域が狭いのはその逆で下図右のように付け根がはっきりとは見えていません。
【特徴】腹袋が小さくスリム
解説
腹袋とは、お腹部分の膨らみを示しています。
下図右のように腹回りがスリムな状態がスピードタイプに多い特徴となります。
スリムな体系ということはそれだけ無駄な筋肉がなく、柔軟性(バネ感)の高い走りが可能となります。
バネ感が強ければ一完歩の回転数があがりやすく、一瞬で加速可能な走りが実現できるため、スピードタイプの特徴として挙げています。
チェックポイント
見分けるポイントとしては前肢の付け根右あたりの部分を確認し、下図のような形状が立派な腹袋の持ち主と言えると考えています。
立派な腹袋を持つ馬は、下図のように腹のラインが地面とある程度の長さで平行に見えます。
スピードタイプのスリム体系はそうではなく、付け根あたりから後躯に向かって引き締まって見えるはずです。
【特徴】長躯短背
解説
長躯短背とは、上図の右のようなイメージです。
腹部分が長く、背中部分が短い胴回りのことを示します。
また、腹部分は後躯に向かって引き締まるようなラインになっていることが望ましいです。
こういった胴回りは、伸縮性の高い動きを実現でき、加速力アップを後押ししてくれます。
伸縮性の高さは、下図のような長い長方形の棒と丸みを帯びた台形の棒で例えるとイメージしやすいです。
2つの厚みと柔らかさは同じなら、台形のほうが少ない力で素早く曲げれることが想像できると思います。
つまり、台形の形をした胴回りのほうがより一完歩の回転数が速い動きを実現できるはずなのです。
チェックポイント
説明した通り、長躯短背は腹部分が長く、背中部分が短い胴回りのことを示します。
見分ける際は背中の長さの方に注目したほうが判断しやすいと思います。
背中が短く、詰まり気味の胴は長躯短背である可能性が高いです。
【特徴】斜尻
解説
お尻の形状には、大きく分けて平尻と斜尻の2種類あります。
スピードタイプは斜尻であることが多いと言われています。
この特徴を持つタイプは、柔軟性の高い走りが実現でき、瞬発力に長けた走法に繋げることができます。
チェックポイント
斜尻、平尻はお尻のラインを見て判断します。
下図右のように腰の終わりあたりから尻尾の付け根にかけて丸みのある形状をしているのが斜尻になります。
馬体noteではこの平尻、斜尻が能力にどれだけ影響するのかを検証しています。
よければこちらもチェックしてみてください。
【特徴】飛節が曲飛
解説
飛節は、馬体の勉強をし始めた人がほとんど最初に調べて勉強する特徴の1つではないでしょうか。
飛節には、直飛と曲飛の2つあり、スピードタイプは曲飛が多いです。
曲飛だと足が伸び切らない構造のため、ひと蹴りでの伸びは小さいですが、その分回転数は速いため、一瞬の加速力に秀でた走りをすることができます。
よって、曲飛の馬は瞬発力勝負が得意なスピードタイプに多いです。
飛節は瞬発型か持続型かを見極めるための特徴としてよく取り上げられていますが、馬体noteでは本当にその影響度が高いかも検証してみました。
よければこちらもチェックしてみてください。
チェックポイント
直飛と曲飛の見分け方は関節の曲がり具合で判断します。
見る場所は馬体の後肢(特にフォトパドック上で写る手前側の足)で判断します。
後肢の関節が曲がって見えるのが曲飛です。
間接を見る際は図のように踵骨(しょうこつ)のでっぱりにより判断が難しいため、逆側の曲がり具合を見るのがおすすめです。
【特徴】足が短い
解説
これは、短距離馬に多い特徴です。
足が短いということは、一完歩(歩幅)も短くなりますが、その分回転数が早く、次の一歩を素早く踏み出すことができます。
足が短い分力のモーメント※1が大きいため、パワーを地面に伝えやすいのです。
足が短いとピッチ(回転力)も早く、パワーとスピードの力を両方発揮しやすいです。
ただ、その背反としてスタミナを消費しやすいので、ここが短距離馬に多い理由だと思っています。
※1 力のモーメント
モーメントとは、一言で言うと「物体を回転させる力」のことです。回転軸(前肢で言うと足の付け根)と力のかかる部分(足元)の距離が短いほどモーメントは大きく(力が入りやすく)なります。普段の生活でイメージするとなんでも短く持った方が力が入りやすいのと同じ考えだと思います。
つまり、モーメントが大きいと力強い走りができる一方で疲れやすく、小さいと疲れにくい一方で力勝負には弱いという解釈になります。
チェックポイント
最もシンプルな見方は胴の長さと比較することだと思います。
他の見極めポイントとしては、足の付け根の位置を確認し、下図のように付け根から地面までの長さを見て判断します。
基本的には前肢を見ますが、後肢のほうがわかりやすいときもあります。
後肢の場合は、足全体で見るのではなく、下図赤矢印のように関節より下の長さを見ます。
多くの馬体を見続けると短い?長い?とよくわからなくなることもあると思います。
ただ、この後肢の特徴に関していうと、足の短い馬は関節から下の長さが明らかに短く見えます。
【特徴】蹄が薄い
解説
蹄とは馬の足元の一部分を示しています(下図参照)。
これは、シンプルに筋肉と同じ考え方で薄ければ薄いほどスピードを出しやすいと考えればいいと思います。
人間で例えると平坦な地面なら厚いブーツとかより普通の靴のほうが速く走れることが想像できると思います。
この足元については、馬体を用いた予想家、解説者の方に高頻度で取り上げている内容なので、影響度としては高そうです。
チェックポイント
蹄の厚みは、後肢ではなく前肢の蹄を見て判断します。
後肢の厚みはどの馬もほとんど同じになっており判断が難しいため、比較的差が出る傾向にある前肢で判断しましょう。
【特徴】繋ぎが短く地面に垂直
解説
繋とは、馬の足元の一部分を示しています(下図参照)。
イメージとしては下図右の赤色線のような感じです。
短く立ちぎみのほうが、一完歩踏み出すまでの効率がよく、回転数を速くすることができます。
足が短い方がパワーを生み出しやすいのと同じ理由で、繋の部分も短い方がよりパワーを出しやすいです。
繋の角度については、斜めより立っているほうが、地面に力を直に伝えられるため、パワータイプに多い傾向です。
スピード要素にも関連した特徴であることは間違いないですが、パワー要素の寄与率が高いと思うので、影響度としては低く見ています。
チェックポイント
繋ぎの角度は、蹄の厚みと同じく、後肢ではなく前肢の蹄を見て判断しましょう。
以上がスピードタイプの特徴になります。
皆さんの予想のご参考になれば嬉しいです!
【参考】スピードタイプが好走するコース
最後にスピードタイプが好走するコースについて触れておきます。
その1:直線が平坦
直線に上り坂がない場合は、特にパワーも必要ないため、スピードだけで押し切れることが多いです。
京都、小倉などの直線が平坦なコースは、スピードタイプに注目しましょう。
その2:直線が短い
何度もいうようにスピードタイプは、加速力が他の馬とは違います。
直線が短い場合のスピード勝負なら他馬が勢いにのる前に一瞬で加速して駆け抜けることができます。
特にスローペースのままで直線を迎えた時は、スピードタイプが断然有利で、他馬を置き去りにできます。
その3:小回りコース
スピードタイプの特徴は、「一完歩(歩幅)が小さい分、足の回転数が速い」です。
一完歩が小さいということは、それだけ小回りがきくと言うことになり、中山などのコーナーが急カーブであるコースをロスなく周回することが可能です。
その4:スタートが重要なレース
スピードタイプは、スタートダッシュが得意です。
短距離やスタート直後がコーナーで位置取りのためにスタートが重要なレースでは、スピード要素のある馬もチェックしておいて損はないです。