飛節(ひせつ)とは、イヌやウマなどの四肢動物の後肢にある関節の1つで、普段から馬体を見る人にとっては馴染みのある言葉かと思います。
馬体を勉強すると必ず目にするワードですね!
競走馬の能力(主にスピードのタイプ)を見分ける要素としてよく取り上げられています。
ただ、いざ馬体を見てもこの飛節の見極めには慣れが必要だと思います。
普段から馬体を見ていてもこれは直飛?曲飛?と思うことも多々あります。。。
そもそもこの飛節の見極めが好走馬を見抜く際にどれだけ重要なのか今まで考えていませんでした。
そこで、本記事では普段飛節を判断している見方も含め、そもそも重要なのか検証した結果をまとめています。
少しでも参考になれば嬉しいです。
飛節の種類
最初はこの2種類の解説と見極め方について(あくまで持論ですが)解説します。
飛節の重要性だけを知りたい方はスキップしてください!
飛節は大きく分けて2種類あり、直飛と曲飛に分けられます。
直飛は主にスピードの持続力に長けた馬、曲飛は瞬発力に長けた馬に多い特徴とよく言われています。
この2種類についてもう少し詳しく解説します。
持続力タイプに多い直飛
飛節は主に関節部分のことを示しています。
後肢を踏み込む際にその関節が曲がり、地面を蹴った後に関節が伸びます。
直飛とはその関節部分を含めた後肢が真っ直ぐに見える状態のことを示します。
真っ直ぐであれば、関節が伸びきるため、地面を蹴った後のエネルギーを効率よく推進力に変換でき、1ストロークも大きな走りを可能とします。
このため、直線の長いコースや短距離戦など長く良い脚が求めらるコースで力を発揮できるのが強みとされています。
逆に、1ストロークが大きい分、瞬発力勝負では少し劣り、小回り適性を求めらるトリッキーなコースではロスの多い走りになる可能性があります。
瞬発力タイプに多い曲飛
曲飛とは、間接含めた後肢に角度がつき、曲がったように見える状態のことを示します。
直飛と異なり関節が伸びきらないため、1ストロークの伸びが大きくはありませんが、その分回転数が多く瞬発力に長けた走りが可能です。
ラスト3ハロン(最後の直線)の上りタイムが速い馬はこの曲飛が多いと思いはずです(本当に多いかはこの後検証)。
また、柔軟性(バネ感)があり、走行中の負荷を軽減できるため、直飛と比べて怪我をするリスクが低いと言われています。
飛節を見分けるポイント
見極め方について(あくまで持論で)解説します。
フォトパドックでの見分け方
フォトパドックとはネットや競馬の専門雑誌などで掲載されている馬体を横から撮影した写真の事です。
パドックだと当然ですが動いているので、馬体の特徴を見抜くには慣れが必要です。
そんなパドックよりも静止画のフォトパドックは飛節の見極めだけでなく、馬体特徴を分析するための比較的見やすいツールだと思っています。
今回は飛節見分け方に絞って解説します。
直飛と曲飛の見分け方は前述でも説明した通り関節の曲がり具合で判断します。
見る場所は馬体の後肢(特にフォトパドック上で写る手前側の足)で判断します。
前述した通り、後肢の関節がまっすぐなのが直飛、曲がっているのが曲飛です。
間接を見る際は図のように踵骨(しょうこつ)のでっぱりにより判断が難しいため、逆側の曲がり具合を見るのがおすすめです。
ただ、写真の写り方によって曲飛?直飛?と判断に困る場合もあります。
具体的には下図の真ん中のようにしなやかに曲がり、判断が難しい飛節が存在します。
ここでは、その飛節を「カーブ」とし、次項の検証でこの3種での能力の違いを判断していきます。
パドックでの見分け方
フォトパドックと同じく後肢を見て判断しますが、パドックでは動的になるため、落ち着いて判断することができません。
録画などで勉強する場合は動画を停止すればフォトパドックと同じように判断は可能かと思います。
ただ、ここではリアルタイムでも見分けれる方法を記載します。
パドックでもフォトパドックと同じく後肢を確認します。
見るタイミングは地面を踏み込む時、地面から離れる時どちらでも確認できます。
それぞれのタイミングで飛節を確認すると、その部分の硬さ(柔軟さ)が全く違います。
直飛は足が真っすぐな棒のようなイメージで、地面を踏み込んだ時も離れた時も関節がピンと伸びています。
曲飛は足がバネのようなイメージで、地面を踏み込んだ時はしなり、離れたも反動によりしなやかに関節が曲がります。
この状態は映像でも比較的見やすく、判断しやすいと思うので是非実際のパドックでも確認してみてください。
【検証】飛節は能力に直結するのか
ここでは飛節の違いがスピード能力に影響するのかを定量的(より具体的)に検証していきます。
フォトパドックからわかる飛節とその馬の実績から読みとれるスピード能力の関連性を比較
スピード能力の判断:全成績の中で最後の直線であがり上位3頭に入選した回数の割合(以降あがり最速率)
対象:過去10年の国内G1で好走した穴馬(計63頭)
スピード能力の判断は、単純にあがりタイムの平均値でもよいのですが、馬場や展開などの条件に左右される影響の考慮が難しいため、あがり最速率で確認しています。
対象を穴馬に絞ったのは、あくまでその馬のポテンシャルではなく、他要因が嚙み合って好走した馬で検証を実施するためです。
検証結果:飛節の分類結果
先ずは過去10年の国内G1で好走した穴馬(計63頭)を直飛、カーブ、曲飛の3種類の飛節に分類しました。
G1で好走した穴馬に直飛と判断できる馬は7頭しかいませんでした。
正直、「カーブ」は直飛なのか曲飛なのか判断が難しいため、この後の検証結果(あがり最速率との関係性)で分類できるか検証していきます。
ただ、はっきりと直飛と分類できるのは7頭のみため、そもそも曲飛よりの馬がG1で穴をあける可能性が高いかもしれません。
検証結果:飛節 vs あがり最速率
3種類の飛節に分類した時のあがり最速率を比較しました。
結論、3種類であがり最速率に差はありませんでした。。。
瞬発力に長けた曲飛に対して直飛のほうがあがり最速率は高い結果となりました。
【考察】飛節を見極めることの重要度
今回の検証でわかったことを以下にまとめます。
- 飛節の違いによる能力差はかわらない(能力への影響度は低い?)
- G1で穴をあけるのは曲飛が多い(そもそも曲飛の割合が多い?)
ここまで散々解説してきましたが、飛節を見極めることの重要性はない可能性が高いです。
スピード能力を見極めるには他の要素もしくは他要素との組合せが重要なのかもしれません。
もちろん、指標(あがり最速率)の妥当性やサンプル数に疑問も少しあるため、今後別指標でも検証していきたいと思います。
ただ、あがり最速率については別の検証にて指標としての優位性を示せているため、全く信用できない指標ではないと思っています。
良ければそちらもご覧ください。
今回の内容が少しでも参考になれば嬉しいです。