本記事では少しマニアックなお尻の形状の違いによる能力への影響度について検証した内容を紹介します。
馬体を見る際に、胴や足の長さを比較して距離適性を判断したり、飛節(足の関節)を確認して瞬発型、持続型を判断するのが一般的に認知されている馬体の見るポイントかと思います。
お尻の形状は、後者の瞬発 or 持続型を判断するのに重要なポイントと言われています。
ただ、いざ馬体を見てもその見極めには慣れが必要だと思います。
普段から馬体を見ていてもこれはどっちだ?と思うことが多々あります。。。
さらに、そもそもこのお尻の形状の見極めが好走馬を見抜く際にどれだけ重要なのか今まで考えていませんでした。
そこで、本記事では見分け方も含め、そもそも重要なのか検証した結果をまとめています。
少しでも参考になれば嬉しいです。
お尻の形状の種類
先ずは見分けられる種類とその見極め方について(あくまで持論ですが)解説します。
ある程度知識があり、重要性だけを知りたい方はスキップしてください!
お尻の形状は大きく分けて2種類あり、平尻と斜尻に分けられます。
もっと細かく見ていくと3種類に分類できるとも言われていますが、私は2種類で分類しています。
平尻は主にスピードの持続力に長けた馬、斜尻は瞬発力に長けた馬に多い特徴とよく言われています。
これも人によっては逆(平尻が瞬発型)と言われている情報も目にしたことがありますが、そこは今回の検証ではっきりさせていきたいと思います。
この2種類についてもう少し詳しく解説します。
持続力タイプに多い平尻
お尻の形状は主に骨格で決まってくると思っています。
馬体は体全体を使って大きな推進力を生みだしているため、飛節とかだけでなく骨格全体の伸縮性も能力に影響してきます。
平尻とはお尻の骨格部分が真っ直ぐに見える状態(下図左)のことを示します。
基本的には飛節の直飛と同じ考え方だと思っています。
真っ直ぐであれば、1ストロークが伸びのある大きな走りを可能とし、直線の長いコースや短距離戦など長く良い脚が求めらるコースで力を発揮できます。
逆に、1ストロークが大きい分、瞬発力勝負では少し劣り、小回り適性を求めらるトリッキーなコースではロスの多い走りになる可能性があります。
瞬発力タイプに多い斜尻
斜尻とは、お尻の骨格部分に丸みがあるように見える状態(下図右)のことを示します。
平尻と逆で1ストロークの伸びが大きくはありませんが、その分回転数が多く瞬発力に長けた走りが可能です。
ラスト3ハロン(最後の直線)の上りタイムが速い馬はこの斜尻が多いと思いはずです(本当に多いかはこの後検証)。
平尻、斜尻を見分けるポイント
見極め方について(あくまで持論で)解説します。
お尻の骨格見ると以下図のように仙椎(せんつい)と尾椎(びつい)に分かれています。
見分ける際はこの仙椎と尾椎のラインを見て真っ直ぐかカーブ気味かを判断します。
平尻は仙椎から尾椎にかけて真っ直ぐ(下図のイメージ)です。
斜尻は尾椎から丸みがあるように見えるはずです。
【検証】お尻の形状は能力に直結するのか
ここではお尻の形状の違いがスピード能力に影響するのかを定量的(より具体的)に検証していきます。
お尻の形状とその馬の実績から読みとれるスピード能力の関連性を比較
スピード能力の判断:全成績の中で最後の直線であがり上位3頭に入選した回数の割合(以降あがり最速率)
対象:過去10年の国内G1で好走した穴馬(計63頭)
スピード能力の判断は、単純にあがりタイムの平均値でもよいのですが、馬場や展開などの条件に左右される影響の考慮が難しいため、あがり最速率で確認しています。
対象を穴馬に絞ったのは、あくまでその馬のポテンシャルではなく、他要因が嚙み合って好走した馬で検証を実施するためです。
検証結果:お尻の形状の分類結果
先ずは過去10年の国内G1で好走した穴馬(計63頭)を平尻、斜尻の2種類に分類しました。
G1で好走した穴馬に平尻と判断できる馬は14頭しかいませんでした。
そもそも斜尻の馬がG1で穴をあける可能性が高いかもしれません。
検証結果:お尻の形状 vs あがり最速率
平尻と斜尻であがり最速率を比較しました。
図の通り、斜尻のほうがあがり最速率が高い結果となりました。
ただ、そもそも平尻のサンプル数が少ないためこれが有意な差か判断できないと思うので統計学を使って確認してみました。
エクセルで簡単にできるt検討というものを実施した結果、ばらつきやサンプル数を考慮してもこの差は有意であることを確認できました。
つまり、お尻の角度はその馬のスピードのポテンシャルを図るために重要な特徴で、平尻と斜尻であがり最速率が異なるが証明されました。
【考察】飛節を見極めることの重要度
今回の検証でわかったことを以下にまとめます。
- お尻の形状の違いは能力差は見分けるために重要な特徴である可能性が高い
- 斜尻が瞬発型、平尻は持続型の可能性が高い
今回の検証結果からお尻の形状を見ることの重要性は高いと判断できます。
ただ、指標(あがり最速率)の妥当性やサンプル数に疑問も少しあるため、今後別指標でも検証していきたいと思います。
また、他要素(特に飛節)との組合せによる影響も調査していきたいと思います。
今回の内容が少しでも参考になれば嬉しいです。